注文が1つだけのリピート注文運用
IFD注文
ここからが本番です。
現在はコンピューターの処理速度が高速になり、記憶装置の容量も格段に大きくなったの で、便利な取引手法が様々開発されています。
その中に、If-Done注文というものがあります。IFDと略称します。
これはポジションを取る時の新規注文と決済注文を同時に出す注文の方法です。
現在の為替レートが149.50円の時に、1米ドルを150.00円で買って、150.50円で売るという注文を考えます。[ 右図(a) ]
ほとんど全ての FX 会社で「1米ドルを150.00円で買って、150.50円で売る」という内容の注文を1つの注文として発注することができます。これがIFD注文です。
IFD注文の前半部分「1米ドルを150.00円で買って」を建て注文、後半部分「150.50円で売る」を決済注文と呼びます。
為替レートが上昇して150.00円になった時、建て注文が約定してポジションとなります。
為替レートが150.05円になると、含み益が0.05円生じます。[ 右図(b) ]
為替レートが150.35円になると、含み益が0.35円生じます。[ 右図(c) ]
為替レートが149.85円になると、含み損が0.15円生じます。[ 右図(d) ]
為替レートが上昇や下降を繰り返した後、150.50円になると決済注文が約定し、ポジションは決済されて消滅し、0.5円の利益が計上されます。[ 右図(e) ]
リピート注文運用
ポジションが決済されたら、元々の「1米ドルを150.00円で買って150.50円で売る」注文を再度発注(再エントリー)します。 [ 上図(f) ]
当初の注文は 149.95円の時に発注し、為替レートが150.00円に上昇して建て注文が約定したわけですが、再エントリーされた注文は、為替レートが150.50円から150.00円まで下落して初めて建て注文が約定するわけです。
[ 上図(g) ] は為替レートが149.95円の時のもので、0.05円の含み損が発生します。
このように、同じIFD注文を繰り返す手法のことをリピート注文運用と呼ぶことにします。
為替レートの大幅上昇
FXのマーケットはその7割が一定の範囲内に入っている、いわゆるレンジ相場だと言われます。
レンジ相場に留まるうちは、リピート注文運用では繰り返し建て注文と決済注文が約定し、利益がどんどん貯まっていきます。
しかしながら、為替レートがレンジ相場の範囲を突き抜けて大幅に上昇することがあります。
先ほどの例では、150.00円で建て注文を入れていますので、為替レートが大幅に上昇した場合、150.50円で決済されますが、再エントリーされた注文は約定せずにポジションはゼロのままです。好ましい状態ではありませんが、為替レートがどこまで上昇しても経済的には何も起こりません。
為替レートの大幅下落
では逆に、為替レートがレンジ相場を突き抜けて大幅に下落した場合はどうでしょうか。
為替レートが150.00円に達する前に反転して下落した場合、ポジションはゼロのままですから、為替レートがどこまで下落しても経済的には何も起こりません。
問題は、150.00円に到達してポジションとなった後、決済値段の150.50円に到達することなく大幅に下落した場合です。
大きな含み損を抱えることになります。
この局面がリピート注文運用における最も重要なところとなります。
当初口座残高を10円として、為替レート、含み損、有効証拠金、必要証拠金を表にしてみます。
当初残高を B、ポジションを取った時の為替レートを R0、現在の為替レートを Rとして上記を一般化してみます。
含み損:R - R0
有効証拠金:B + (R - R0)
必要証拠金:R x 0.04
証拠金余裕額 = 有効証拠金 ー 必要証拠金
= {B + (R - R0)} - {R x 0.04}
= B + 0.96 R - R0
上記は、1米ドルのポジションを想定していますが、当初残高以外は、10米ドルでは10倍、100米ドルでは100倍しなければなりません。
FXの世界ではポジションの量を「ロット」と呼びますので、これを L と表記すれば、ロットが L の時の証拠金余裕額は
証拠金余裕額 = B + L (0.96 R - R0) ・・・(式1)
となります。
リピート注文運用の肝は証拠金余裕額をゼロ以上に保つこと
リピート系注文では、証拠金余裕額をゼロ以上に維持できれば取引を継続でき、非常に高い確率でIFD注文から何度も利益を生み出すことが出来ます。
(式1)を使うと、次のような考察をすることが出来ます。
① 建値150円のポジションを1,000米ドル持っているとします。口座に10万円あるとき、為替レートの下落にどこまで耐えられるか?
R > (LR0 - B) / (0.96 x L)
= (1,000 x 150 - 100,000)/(0.96 x 1,000)
= 52.1円
② 為替レートの下落を70円/米ドル まで許容するとしたら、ロット(ポジション量)は最大いくらか?
L < B / (R0 - 0.96R)
= 100,000/(150 - 0.96 x 70)
= 1,207.8 米ドル
為替レートが150円/米ドルの時に
投資資金10万円で
米ドル・円、1,000通貨で買いのIFD注文1つだけのリピート注文運用
を始めれば、FX業者から強制決済を受ける可能性が非常に低い状態で運用を続けることが出来ることが分かります。
今考えている例では、150.00円で買って150.50円で売るという前提です。
これが実現するのが月に1度とすると、年間の収益は
1,000 x 0.5円 x 12 = 6,000円となります。10万円の投資で6,000円のリターン → 利回りは6%となります。
利回りが年6%というと、十分なリターンのように思えますが、あくまで仮定の話であり、その実現可能性については何とも言えません。
観察期間における平均的な為替レート水準がどのレベルなのかによって、実現可能性が大きく変わってしまうことは明白です。
ここまでが基礎編です。